けっこう話題にもなったのでご存知かもしれませんが、9月7日のピーチ機内で発生したマスク拒否男の問題がありました。
個人的見解ですので反論もあるとは思いますが、当該男性や航空会社の善悪を煽るとか、弾劾するような意図はありません。
このブログで私見を述べる事でそれほど大きな影響があるとは思いませんが、今後の飛行機の旅が旅行者にとって快適であるよう願って、一人の修行僧のカタワレとして敢えて意見を述べる事にしました。
私たち航空修行僧にとってこのご時世の中でどう振舞うべきなのか考察してみました。
経緯
この一件は、9月7日釧路空港での乗客同士の口論が発端のようです。
離陸前のピーチMM126便に乗り込んだ本件男性は別の搭乗客に、マスクを着用していないことを咎められたそうです。
程なく言い合いに発展、客室乗務員が仲裁に入ります。
そこからの一連の流れはYoutubeにも投稿され話題になっていますが、マスクを着用するか別の座席への誘導を試みる乗務員に対し男性は、
「自分で予約購入したチケットだから席は移らない」
「科学的根拠が無いからマスクはしない」
などと繰り返し、乗務員が
「指示に従わない場合は降りて頂きます」
と述べると
「それは無理です。正式な書面を出してくれ」
と、やや下を向き腕を組んだ状態で膠着状態に。乗務員が周囲の乗客を別の座席に移動させこの動画は終わっています。
私はその場にいたわけでは無いので、この先の出来事はSNSや報道等を元にまとめたもので、細部まで的確かは保証できませんが、その後男性は興奮状態になったのでしょうか。
他の乗客に対し「侮辱罪だ」などと突っかかり、仲裁に入る乗務員にも反発したという。
「書面を出せ」という男性に対し、機長が航空法に基づく安全阻害行為と判断し警告書を渡すものの「やれるもんならやってみろ」と恫喝。
警告書も提示した後も指示に従わない事で「安全阻害行為」が成立と判断し、当該機は新潟空港に臨時着陸する。
着陸後、乗務員の指示には従い、地上係員と警察に引き渡されたといいます。
当該機はその後、新潟空港を離陸し最終的には2時間以上遅れて当初の目的地である関西空港に到着した。
経緯をまとめると、乗客同士のトラブルから指示に従わなかった乗客が安全阻害行為となり、目的地でない空港に臨時着陸し警察に引き渡され、当該機は2時間遅れで目的地に到着します。
残りの乗客124人はこの男性のおかげで(濃霧で出発が遅れたのも含め)意味もなく2時間を失った形になりました。
そもそもマスク着用の是非が論点ではない
このご時世ですから、センセーショナルな見出しが故ネットなどでも大きく騒がれていて、元IT会社経営のあの方も当然のように敏感にTwitterで反応しています。
「マスクなんて意味ない」
「マスクぐらいで緊急着陸なんて」
という意見もあれば
「たかが1〜2時間なんだから素直にマスクしたらいいのに」
といった、マスク着用の是非で語られることが多い印象です。
マスク着用に否定的な意見としては
「科学的根拠がない」
「マスクくらいじゃ防げない」
という論調が多く
肯定的な意見では
「周囲の目が気になるから」
「着用はもはやマナーである」
という語り口です。
じゃあどっちが正解なのかというと、正解は誰にもわからないというのが正解でしょう。
そもそも論点がずれていて、マスク肯定派はエチケット・マナー等の観点で意見し、否定派はマスクそのものの防御力を切り口にするので、いつまで経っても平行線です。
100%間違いのない正解があれば、そもそもこんな大惨事になっていません。
で、じゃあこの件の論点は何かというと、ズバリ「乗務員の指示に従わなかった」ことです。
乗務員の言う事は絶対
乗務員だーれ?
とか冗談はさておき、機内での安全と秩序を保つ役割は乗務員が担います。
「機内で搭乗者に対して接客をする」と言うのも役割の一つですが、最重要任務は保安です。
もし万が一の事態になった場合に乗務員は自身の安全より乗客の安全を確保するはずです。
「はず」と言うのは、実際そんな危険な状況に私自身は遭遇したことがないので確定的なことは言えませんが、おそらく例えば不時着炎上した場合には燃え盛る機内から自身の身の危険を顧みず、乗客の脱出を最優先とするでしょう。
つまり何が言いたいかというと乗務員は接客を主たる任務とするサービス業、例えばレストランのウェイターのような職種ではないという事です。
訓練に訓練を重ねた保安のスペシャリストであり、自身の危険を顧みないという点からはSPや特殊部隊のような迫力ある存在なのです(あくまでも機内での話)
当然、機内ではSPや特殊部隊のようにむっつりと仏頂面でいる訳もなく、平時であれば笑顔で心地良いサービスを提供してくれるので、例の男性は無意識のうちに接客業と勘違いしたのでしょうか。
一部日本でも例はあるようですが、特に海外の航空会社では言うことを聞かない乗客はタイラップ(結束バンド)などで座席に縛り付け拘束されますし、離陸前なら保安要員に引き摺り出された例もあります。
航空会社に限らず日本企業は波風立てることを是としない傾向があるので尚更わかりにくいのかもしれませんが、機内に於いては乗務員には安全運行・機内の秩序維持の責任(機長が最高責任者)があり、その指示に従わない場合は罪に問われます。
ウェイターと勘違いしているかもしれない問題に於いては「キャビンアテンダント」という呼称もこういう問題の一因かもしれません。
海外のユーチューバーの動画を見ていると「キャビンクルー」と呼んでいる例が多いです。
こちらの方が実態を表していると思いますし、意味不明な勘違いも減ると思うのですが如何でしょうか。
客自身が「お客様は神様」と思ってはいけない
言葉にすると当たり前の感じがしますが、例の男性も含め、意外とこう思っている人もいるのかもしれません。
本件男性も
「正式にチケットを買ってこの座席に座ってる。だから移動しない」
と発言しています。
「金払ったんだから正式な客だ。お客様は神様だろ?」と言わんばかりに感じられます。
客自身が「お客様は神様」と考えてしまうと、「私は神だ」と発言しているのと同じであり、それはもはや乗客ではなく宗教です。
この機内に限らず「クレーマー」と呼ばれる人種は、自身の権利主張は猛烈にするものの、その権利行使する際に伴う義務は無視する傾向にあります。
あまり熟読する人はいないと思いますが、各航空会社の運送約款には「運行に支障をきたす場合・・・」としっかり書いてあります。
権利を主張するなら負うべき義務を果たした上で主張しなければなりません。
私たちは神様などではなく乗客です。
上級会員ももちろん神様ではありません。ただのお得意様です。
過去にはこんな話も
以前Twitterでそこそこ話題になったのですが、ある乗客がサクションカップ(吸盤)式のカメラマウントを機内の窓に取り付けたと。
乗客は窓からの素晴らしい眺めを撮影・記録したかったのでしょう。
気持ちはわかりますよ、非日常の景色が楽しめる空飛ぶ展望台みたいなものですから、飛行機は。
ですがそこに乗務員から
「安全上の懸念があるので窓には取り付けないでください」
と要請が入ります。
乗客は一旦は従ったものの、乗務員が遠ざかるとまた装着すると言う意味不明な行動に出ます。
もう一度近づいてきた乗務員にキレ気味(目撃者の主観)に対応されるといった場面があったそうです。
カメラマウントは私も使うことがあるのですが各社対応が違います。
過去の経験と記憶では、
ANA国際線ビジネスクラス 一切カメラについて触れられなかった。
ユナイテッド航空ビジネスクラス 一切カメラについて触れられなかった。
シンガポール航空ビジネスクラス 飛行時間は○時間だがカメラのバッテリーは足りるのか?と逆に心配される。
一方、何らかの制限を受けた例では、
ANA国内線普通席 「GPSは飛行機の計器などに影響が出る恐れがあるのでお切りくださいね」
ジェットスター 「離着陸時は視界を妨げる恐れがあるので窓には取り付けないで下さい。上空でシートベルトサインが消えている時は全く問題ありません」
シンガポール航空の対応が光ります。
シンガポール航空はとても積極的に接客するポリシーなのか、座席をベッドにしてカメラを構えていたら「撮影手伝いますよ」と申し出てくれたり、カメラ持っているだけで積極的に画面に収まり笑顔で手を降ろうとしてくれます。
話が脱線しましたが結局、各社で対応が違いますし、ましてや同一航空会社でも便によって違う例もあります。
その時々で乗務員の判断によって指示されるのですが、従うべきなのは言うまでもありません。
今回の男性が注意されている際に「ジェットスターは何も・・・」と言う発言をしています。
しかし私は声を大にして言いたい
「あなたの乗ってる飛行機はジェットスターじゃなくピーチですから〜、残念!」と。
今回の件で気になる点
今回の一見で気になる点があります。
当該男性にマスクについて注意したとされる別の乗客
注意した別の乗客の存在があるとされています。
世間ではマスク警察などと言われる行為でウザがられますが、この場面ではどうするべきだったのでしょうか。
スモールトークが当たり前の欧米と違い、日本人は一般的に見ず知らずの人と気軽に世間話をするような風習はありません。
そんな中、知らない人からいきなり、世間話ならまだしも開口一番に注意をされるというのは強い抵抗感を感じるでしょう。
注意したとされる乗客の言い方がどういう言い方だったかわかりませんが、トラブルに発展しかねない行動なのは間違いありません。
なぜ乗務員の指示に従わず、警察には素直に従ったのか
乗務員の指示・要請には頑なに拒否し続けた男性も、新潟空港では警察官には素直に従い降機しています。
この男性の「正式にチケットを買ってこの座席に座ってる。だから席の移動はしない」と主張していたのです。
であれば警察官に「正式に関西行きのチケットを持ってるから関西まで降りない」と主張しなければ筋が通りません。
先ほども述べた「乗務員の任務」を履き違えていると言わざるを得ません。
「接客を伴う飲食店」の女性従業員とでも思ってるのでしょうか?
しかし、飲食店の店員だって売り上げのために笑顔で接客するんですけどね。
結局のところこの男性は乗務員を下に見ていたのではないかと思われる節が感じられてなりません。
国家権力である警察官に素直に従っている事からも明らかです。
マスク着用についてはあくまでも「要請」ですので従わなくても罪ではないのでしょう。
しかし、機内の秩序を保つ為「座席の移動」については従わなければいけないはずです。
もし窓に亀裂でも入ったら乗務員は乗客を安全度の高い座席に移動させるでしょうし、当然この男性も従うんではないでしょうか。
自身の身に危険があるとか、逮捕とかされるのは嫌だから従う・それ以外は従わないというのであればただのワガママな面倒な人でしかありません。
優等生を装えとは言わないが・・・
では、私たちのような航空修行僧や旅行者はどうするべきでしょうか。
無闇に他の乗客に話しかけない
上にも書きましたが、特に日本人は見ず知らずの人と話をすることを好みません。
ましてや、世間話ではなくいきなり注意を受けるとなれば、相手も感情的な反応を返す恐れが高くなります。
今回のマスク不着用もそうですが、何か他の乗客の行動に不満があった場合は乗務員に伝えるべきだと思います。
本件でも乗務員は、周囲の乗客でもし気になるなら座席移動できると述べていますし、当の本人にマスク着用を強要せずとも一定の不満解消に乗務員は動くでしょう。
満席とか不可能な場合もありますが、乗務員は機内の秩序を保つ任務がありますから無用なトラブルを避ける意味でも基本的には協力してくれる場合が多いと思います。
乗務員の指示には素直に
乗務員は何の意味もなく乗客に指示を出すことはありません。
運行上何らかの障害があるからこそ、その障害を取り除く為に乗客に指示を出します。
座席を倒して熟睡していても、着陸態勢に入った時には起こされます。
寝ている神様を起こしたらバチでも当たるかもしれませんが、私たちは神様ではありません。
起こされるのも当然なのです。
周囲に顰蹙を買って気まずい思いをしながら機内で過ごすのはしんどいと思いますよ。
私は、特に飛行時間の長い国際線では乗務員の方とよく世間話をする方です。
行った事のない行先のローカルなお店やオススメを教えてもらえたりと、世間話とはいえとても有用で機内で過ごす時間もより楽しいものになりますし、旅先でも充実した体験ができたりと良い事尽くめです。
乗務員も感情を持った人間ですから、最低必要なことはしてくれるでしょうが、指示に従わないトラブルメーカーにわざわざオススメを教えたり、楽しく気楽な世間話などしません。
どちらが良いですか?
ただし、乗務員もわざわざ乗客と世間話などしたくはないでしょうから、乗務員の仕事の邪魔にならない常識的な範囲で行動するべきなのは言うまでもありません。
マスク着用について
マスクの着用については、各航空会社から「お願い」「要請」という形で発表されています。
世界中の航空会社で発表されていますが、ここでは日本の修行僧の関心の中心、ANAとJALのサイトリンクを記載しておきます。
ANAに関しては、同じANAHD傘下のピーチでの騒動だからか9月10日付で更新されています。
「マスク着用を拒否する場合は搭乗を断る場合がある」との文言もありますね。
どうしても密がイヤなら
そもそも絶対に感染しないと強い意思を持って行動するなら、家から一歩も出ずに家族とも別居しなければいけないでしょう。
そういう考えであれば、旅行や航空修行はあり得ません。
人それぞれですから何とも言えないですが、そんな生活は感染して隔離されてるのと変わりません。
社会と隔離しているのですから。
ですが、どうしても移動しなければいけない人もいれば、旅行したくてウズウズしている人もいますよね。
そんな場合にオススメの機材・座席を紹介します。
ANAの国内線で用いられるB767-300(76P)です。
この中でプレミアムクラスの中央列(D列)に注目です。
左右は通路でありディスタンス確保に適した配置で隣とのトラブルや心配は無用でしょう。
さらに言えば、2Dが感染防御に於いて最優秀シートと言えます。
1Dは後方からの飛沫のリスクを完全には払拭できませんが、2Dであればその後方はバルクヘッド(壁)であり、その左右通路も飛行中はカーテンで仕切られます。
こちらはJALのB767-300(763)のファーストクラスです。
こちらもANA同様に中央列が一席独立ですので安心です。
設定は1列しかないので、最優秀オススメ座席は1Dとなり、こちらも座席の後方はカーテンで仕切られます。
続いてこちらはJALのEmbraer190(E90)のクラスJの座席です。
これもまた特徴的な1-2配列でA列ならお隣は通路ですからディスタンスも確保できます。
ファーストクラスやプレミアムクラスはちょっと高いと考えるならこの選択が有効です。
最後にJALのSAAB340B(SF3)です。
プラス1,000円のクラスJすら厳しい、節約したいと考えるならこのプロペラ機の一択です。
本件のピーチを含むLCCには残念ながらこういった特殊な座席配列はありませんし、上で挙げた機種も路線が限られているので、自由自在に機種を選択するのは難しいかもしれません。
ですが、頭の片隅に入れておいて損はありません。
まとめ
今回の件はピーチ機内で起こった事であり修行僧ではないと思われます。
ですが、航空会社ラウンジや上級座席などでは意味もなく偉ぶる人も時々見かけます。
上級会員とは単に「お得意様」なだけであり、偉くなった訳ではありません。
ましてや、面倒な客はお得意様とは言えません。
今回の件は結果として2時間以上も遅延する結果となりました。
他の乗客はただ意味もなく迷惑を被り、高頻度かつ短時間の乗り継ぎを多用する修行僧にとってはこれは大問題であります。
節度を守り、乗務員の指示に従い、定時運航の妨害になるような行動は厳に慎むべきです。
世の中は人と人です。
顰蹙を買い冷たい視線に晒されながらフライトするのではなく、可能なら現地のオススメ情報を教えてもらったり楽しい会話をしたりしながらフライトした方が何倍も楽しく思い出に残るのは言うまでもありません。
お得意様(上級会員)とは、そのサービスが気に入り高頻度で利用するからお得意様なのです。
例えば、レストランなどでスタッフに盾をついて迷惑行為に及んだなら出禁であり、上級会員ではあるがもはやお得意様ではありません。
それは空の上でも同様です。
規定のフライトポイントを獲得すれば上級会員にはなれます。
しかし、多頻度利用者でも面倒を起こす客はお得意様ではなく迷惑客です。
実際、私たち修行僧はポイント獲得の為だけに利用するスタイルですから真のお得意様という存在ではないとも言えます。
私たち修行僧は、なぜ上級会員を目指すのかを常に念頭においておきたいものです。
お得意様としてのサービスを受けたいからあれば良いのですが、偉ぶる為・威張りを利かす為となるとナンセンスです。
今回の一件で、通常の旅行者はもちろん、修行僧がどう振舞うべきか、今一度それぞれの行動・言動を見返す良い機会になったのではないでしょうか。



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